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松山地方裁判所 昭和45年(レ)7号 判決 1972年9月28日

控訴人 三好孝彦

被控訴人 大西ヤスノ

<ほか八名>

右被控訴人ら訴訟代理人弁護士 津島宗康

主文

1  原判決中控訴人の土地明渡請求を棄却した部分を取消す。

2  控訴人に対し、被控訴人ら全員は別紙目録(一)記載の建物を、被控訴人大西運敏は同目録(二)記載の建物をそれぞれ収去して、同目録(三)記載の土地を明渡せ。

3  控訴人のその余の控訴部分を棄却する。

4  控訴人の当審における追加請求をいずれも棄却する。

5  訴訟費用は、第一、二審を通じこれを三分し、その一を控訴人の、その余は被控訴人らの負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、控訴人

1  原判決中控訴人敗訴部分を取消す。

2  控訴人に対し、被控訴人ら全員は別紙目録(一)記載の建物を、被控訴人大西運敏は同目録(二)記載の建物をそれぞれ収去して、同目録(三)記載の土地を明渡せ。

3  控訴人に対し、被控訴人大西ヤスノは金六、五六七円を、その余の被控訴人らは各金一、六四一円を支払え。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二、被控訴人ら

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴人の当審における追加請求をいずれも棄却する。

3  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二、当事者の主張

一、請求原因(控訴人)

1  控訴人は、昭和二七年はじめころ、亡大西広見(以下広見という)に対し、別紙目録(三)記載の土地(以下本件土地という)を、賃料年額坪当り一五円八四銭、年末支払いの約定で賃貸して引渡した。

2  本件土地の賃料は、次のように推移している。

(1) 昭和三三年度から昭和三七年度までは、年額一、四七二円であった。

(2) 控訴人と広見は、昭和四一年六月ころ、昭和三八年度にさかのぼって同年度以降は年額二、九四四円(坪当り三二円)に増額する旨の合意をした。

(3) 控訴人の代理人三好千春と広見の代理人大西運敏は、昭和四二年四月一日、昭和四二年度以降は年額四、六〇〇円(坪当り五〇円)に増額する旨の合意をした。

(4) 本件土地の所在地である伊予三島市寒川町地方には、固定資産税の増額と同率で賃料を増額する旨の貸主の意思表示があれば、借地人の承諾を要せずに当然に右意思表示どおり賃料が増額されるという慣習が存在するところ、控訴人は、昭和四四年九月ころ、伊予三島簡易裁判所において、被控訴人大西運敏(その余の被控訴人の代理人を兼ねる)に対し、昭和四三年度にさかのぼって同年度以降年額五、五二〇円に増額する旨の意思表示をした。

3  ところで、広見は昭和三三年度から昭和四〇年度までの賃料合計一万六、二八二円の支払いをしなかったので、控訴人は、昭和四一年六月ころ、広見に対し、右延滞賃料の催告をしたが、その支払いをしないまま昭和四三年八月五日広見が死亡したため、被控訴人大西ヤスノ(広見の妻、相続分三分の一)、その余の被控訴人坂上サワ子ら八名(広見の子、相続分各一二分の一)が相続により右相続分の割合で広見の本件土地賃貸借契約にかかる権利義務を承継した。

4  そこで、控訴人は、被控訴人ら全員に対し、昭和四四年四月一一日到達の書面をもって、右賃料債務不履行を理由に本件土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。

5  仮に昭和四〇年度までの賃料支払いについて債務不履行がなく右解除が認められないとしても、

(1) 広見および被控訴人らは、昭和四一年度から昭和四四年度までの賃料の支払いをしなかったので、控訴人は被控訴人らに対し昭和四四年六月一〇日伊予三島簡易裁判所に本訴訟を提起して右賃料を支払うよう催告したにもかかわらず、その額について被控訴人らも認めている年額一、四七二円すらその支払いをしなかった。

(2) そこで、控訴人は、被控訴人ら全員に対し、昭和四五年二月九日到達の書面で、右債務不履行を理由にあらためて本件土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。

(3) 仮に右契約解除に際し催告をなさなかったとしても、広見および被控訴人らは、前記のとおり一〇年以上も本件土地賃料の支払いを遅滞しているうえ、昭和三三年ころより本件土地上の建物に入居せず管理者を置かないでこれを放置したままにしており、そのため右建物および本件土地は荒れ放題で雑草がおい繁り火災発生のおそれがあるなど、本件土地使用について善管義務を尽していないから、被控訴人らは本件土地賃貸借契約の信頼関係を破壊しその継続を著しく困難にしたものというべきであって、かかる場合には催告を要しないで直ちに契約を解除することができると解すべきである。

6  本件土地上に、被控訴人ら全員は別紙目録(一)記載の建物を共有し、被控訴人大西運敏は同目録(二)記載の建物を所有して、それぞれ本件土地を占有している。

7  本件土地の昭和四四年度までの賃料(ただし昭和四四年四月一二日以降の分は賃料相当の損害金)の残額は、別紙計算書(一)記載のとおりである。すなわち、昭和四二年四月一日、一万五、〇〇〇円の支払いを受けたから、これをまず昭和三三年度から昭和四一年度までの賃料に対する昭和四二年末日(ただし昭和四一年度分は昭和四二年三月末日)までの年五分の割合による遅延損害金三、九三〇円に充当し、次いで昭和三三年度から昭和三八年度までの賃料合計一万〇、三〇四円に充当し、残額七六六円を昭和三九年度の賃料二、九四四円に内入充当した。したがって、昭和四四年四月一一日までの賃料および右以後同年末までの損害金の残額(ただし、第一回目の解除が認められない場合は全部賃料となる)は合計二万三、七〇六円であるから、これを被控訴人らの前記相続分の割合に従って算出すると、被控訴人大西ヤスノが支払うべき賃料等残額は七、九〇二円(当審における追加分は一、八四〇円)となり、その余の被控訴人らが支払うべき賃料等残額は各一、九七五円(当審における追加分は四六〇円)となる。

よって、控訴人は、被控訴人らに対し、本件土地賃貸借契約解除に基く原状回復請求として本件土地の明渡しと、昭和四四年度までの賃料および損害金の支払請求と右各金員の支払いを求める。

二、請求原因に対する答弁(被控訴人)

1  請求原因1は認める。

2  同2(1)は認め、(2)ないし(4)は否認する。

3  同3のうち、昭和三三年度から昭和四〇年度までの賃料を年額一、四七二円の割合によって延滞していたこと、広見が死亡し同人の権利義務を被控訴人らが主張のとおり相続したことは認めるが、その余の事実は否認する。

4  同4は認める。

5  同5(1)は否認する。(2)は認める。ただし、右契約解除の意思表示は、解除の要件である債務不履行に対する履行の催告がなされていない。したがって、民法五四一条による契約解除の効力は生じない。(3)のうち、昭和三三年度から昭和四〇年度までの賃料の支払いを遅滞していたのは、昭和三二年ころ借地の一部が道路敷地となって現在の坪数となったため、借地の坪数が不明で賃料額の算出ができなかったことによるものである。また、本件土地上の建物は居住者不在のため管理が十分ではなかったが、近く被控訴人大西運敏が右建物に居住する予定でありその準備中である。法律上の主張は争う。

6  同6は認める。

7  同7は争う。

三、抗弁(被控訴人ら)

1  被控訴人大西運敏が広見を代理して控訴人の代理人三好千春に対し、昭和四二年四月一日、それまでの延滞賃料一万五、〇〇〇円を支払った。よって、被控訴人らに債務不履行はない。従って、第一回目の解除は効力を生じない。

2  被控訴人大西運敏(他の被控訴人らの代理人を兼ねる)は、昭和四五年二月一三日、控訴人に対し、原判決によって支払いを命ぜられた昭和四三年度分までの延滞賃料四、〇〇七円および昭和四四年度分賃料一、四七二円の合計五、四七九円を現金書留郵便で郵送したが、約七日後に受領を拒否して返送して来たので、そのころ直ちに弁済供託した。従って、これにより昭和三三年度から昭和四四年度までの賃料債務は全部消滅し、第二回目の解除も効力を生じない。

四、抗弁に対する答弁(控訴人)

1  抗弁1の一万五、〇〇〇円を受取ったことは認めるが、その余は争う。

2  同2の郵便の受取りを拒否したことは認めるがその余は争う。

第三、証拠関係≪省略≫

理由

一、控訴人は昭和二七年はじめころ亡広見に対し本件土地を賃料年額坪当り一五円八四銭、年末支払いの約定で賃貸して引渡したこと、昭和三三年度から昭和三七年度までの本件土地の賃料は年額一、四七二円であったことは、当事者間に争いがない。

二、そこで本件土地の賃料増額の有無について判断する。

1  控訴人と広見が昭和四一年六月ころに昭和三八年度にさかのぼって同年度以降の本件土地の賃料を年額二、九四四円に増額する旨の合意をしたとの控訴人の主張については、≪証拠省略≫中には右主張に沿う部分があり、また証人大地勝義(原審および当審)および井原順子(当審)もその趣旨の証言をしているが、右は、①広見の代理人大西運敏が昭和四二年四月一日に控訴人の代理人三好千春に対しそれまでの本件土地の延滞賃料を支払ったがその額は一万五、〇〇〇円であること(当事者間に争いがない)、②≪証拠省略≫によれば、右は昭和三三年ころから一〇年間の賃料の概算払いとして支払ったものであることが認められ、これらによれば、広見およびその代理人大西運敏は本件土地の賃料は昭和三三年当時からずっと年額一、四七二円であり、その後増額されたことはないものとして支払ったものと推認できること、③≪証拠省略≫によれば、右千春は右延滞賃料受領の際格別異論を留めず受取っており、賃料額についても知らない旨答えているうえ、その当時控訴人は川之江中央病院に入院中であったが、右千春から大西が右賃料を支払いに来ている旨の連絡を受けながら単に預っておくように指示しただけで、賃料額を明示して不足額を請求するよう指示したことはないことが認められ(る。)≪証拠判断省略≫

2  控訴人の代理人三好千春と広見の代理人大西運敏が昭和四二年四月一日に昭和四二年度以降は年額四、六〇〇円に賃料を増額する旨の合意をしたとの控訴人の主張については、これに符合する≪証拠省略≫はあるが、右は≪証拠省略≫に照らし措信することができず、ほかに右主張を認めるに足りる証拠はない。

3  ≪証拠省略≫によれば、伊予三島市寒川町地方では大地主らが集ってその年度の地代値上げの相談をし、固定資産税が上がるとほぼそれに比例して地代を増額する旨の申合せをし、それが当地方の相場となって大多数の借地人が右賃料を支払って来ていることが認められるが、右事実によってはいまだ控訴人主張の慣習の存在を認めるに足りず、かえって右証拠によれば、その年度の地代は固定資産税が上がったからといって必ずその上昇率に比例して増額されるというものではなく、増額率はその他さまざまな要因が加わって決められるものであること、また地主の増額の要求があっても借地人が必ずそれに拘束されるものではなく、地主と借地人の交渉話合いによって決ってくるものであることなどが認められ、右事実によれば控訴人主張のような内容の慣習は存在しなかったものと推認される。

また、控訴人が昭和四四年九月ころ伊予三島簡易裁判所において被控訴人大西運敏(同被控訴人はその余の被控訴人らの訴訟代理人であった)に対し昭和四三年度にさかのぼって年額五、五二〇円に賃料を増額する旨の意思表示をしたとの点について検討するに同年六月一〇日に昭和四三年度の賃料として年額五、五二〇円の支払いを請求することなどを含む本件訴訟を伊予三島簡易裁判所に提起し、訴状副本は同月二五、六日ころ被控訴人らにそれぞれ送達されたことは本件記録上明らかであるが、一方控訴人は、昭和四四年一〇月二一日に同裁判所で開かれた本件訴訟の第四回口頭弁論において、昭和四三年度以降の賃料を年額五、五二〇円に増額する旨の一方的意思表示をしたとの主張はしない旨陳述していることが本件記録によって認められる事実に照して考えると、右訴の提起があった事実から直ちに控訴人が昭和四四年九月ころに同裁判所において大西運敏に対し昭和四三年度以降賃料を年額五、五二〇円に増額する旨の意思表示をしたとの事実を推認することはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠もない。

そうすると、本件土地の賃料増額があったとの控訴人の主張はいずれも認められないので、昭和三三年度以降の本件土地の賃料は年額一、四七二円であるといわなければならないところ、広見は昭和三三年度から右賃料の支払いを遅滞していたこと、しかし被控訴人大西運敏が広見を代理して昭和四二年四月一日にそれまでの延滞賃料として一万五、〇〇〇円を控訴人の代理人三好千春に支払ったこと、広見は昭和四三年八月五日死亡し、被控訴人大西ヤスノ(広見の妻、相続分三分の一)、その余の被控訴人坂上サワ子ら八名(広見の子、相続分各一二分の一)が相続により右相続分の割合で広見の本件土地賃貸借契約にかかる権利義務を承継したこと、控訴人は被控訴人全員に対し昭和四四年四月一一日ころ到達の書面をもって、被控訴人らは本件土地の賃料を支払わないとして本件土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことなどの事実は、いずれも当事者間に争いがなく、控訴人が昭和四一年六月ころ広見に対し昭和三三年度から昭和四〇年度までの延滞賃料(金額は明示していない―明示したとする当審における控訴人本人尋問の結果は措信しない―が、延滞賃料が年額一、四七二円であることは当初からの金額で当事者間に争いのないところであるから右期間の延滞賃料総額が合計一万一、七七六円であることは広見にも容易に知り得る状況にあったと認められるから催告の効力に影響はない)を催告したことは、≪証拠省略≫によりこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

しかして、右催告のあった昭和三三年度から昭和四〇年度までの延滞賃料に対する昭和四二年四月一日(一万五、〇〇〇円の弁済のあった日)までの民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を算出すると、別紙計算書(二)のとおりの金額となり、昭和四〇年度までの遅延損害金総額二、七九七円と賃料総額一万一、七七六円とを合算すると一万四、五七三円となり、昭和四二年四月一日に一万五、〇〇〇円を弁済したことによって、広見は控訴人に対し、昭和四〇年度までの本件土地の賃料および遅延損害金を完済した(四二七円の過払いとなる)ことになる。

したがって、控訴人が解除権を行使する前に、広見がその催告を受けた賃料全額とそれまでの遅延損害金を弁済したのであるから、控訴人の右解除権は消滅したものと解され、その後になした控訴人の右解除の意思表示は無効なものといわなければならない。

四、そこで次に、控訴人の仮定的解除の主張について判断する。

1  ≪証拠省略≫を総合すると、広見および被控訴人らは昭和四一年度から昭和四三年度まで(もっとも前記のとおり昭和四二年四月一日に弁済された一万五、〇〇〇円のうち四二七円は昭和四〇年度までの賃料および遅延損害金を支払った残額の過払分であって、これは昭和四一年度の賃料に対する昭和四二年四月一日までの遅延損害金一八円に充当され、残額四〇九円は同年分の賃料に充当されるので(控訴人は昭和四二年分以降の賃料に対する遅延損害金を請求していない)その限度で弁済ずみとなる結果、昭和四一年から昭和四三年までの延滞賃料は四、〇〇七円となる。)および昭和四四年度の賃料一、四七二円の合計五、四七九円を後記控訴人の第二回目の解除の意思表示があるまで支払わなかったこと、控訴人は被控訴人らに対し昭和四四年六月一〇日伊予三島簡易裁判所に昭和四一年度から昭和四三年までの延滞賃料の支払請求を含む本件訴訟を提起し、訴状副本は同月二五、六日ころ被控訴人らに送達されていること(この点は本件記録上明らかであり、右訴状送達が催告にあたることはいうまでもない。)などの事実が認められ右認定に反する証拠はなく、控訴人が被控訴人全員に対し昭和四五年二月九日到達の書面で右債務不履行を理由にあらためて本件土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことは、いずれも当事者間に争いがない。

なお、本件記録によれば、控訴人は本件訴訟において昭和四一年度から昭和四三年度までの延滞賃料として合計一万三、〇六四円の支払請求をしていることが認められ、これと実際の延滞賃料合計額四、〇〇七円との間には若干の開きがあるが、右はいまだ請求債権の同一性をそこなうに至っているものとは解されない。そして、右催告に際しては、履行すべき相当の期間を定めて履行の請求をしているものではないが、昭和四五年二月九日の本件土地賃貸借の解除までには相当の期間を経ているのであるから、右催告は解除の前提要件として欠けるところのない有効なものといわなければならない。

そうすると、控訴人が昭和四五年二月九日昭和四一年度から昭和四三年度までの賃料遅滞を理由としてなした右解除は有効であり、本件賃貸借は終了したものといわざるをえない(なお昭和四四年度の賃料一、四七二円も履行遅滞に陥っているが、これが請求は当審において追加されたもので、右解除後に請求されたことが明らかであるから催告された遅延賃料に含ましめることはできないが、このことは前記結論を左右するものではない)。

2  もっとも、被控訴人らは、他の被控訴人らの代理人も兼ねる被控訴人大西運敏が昭和四五年二月一三日に控訴人に対し、原判決によって支払いを命ぜられた昭和四三年度までの延滞賃料四、〇〇七円および昭和四四年度分の賃料一、四七二円の合計五、四七九円を現金書留郵便で郵送したが、約七日後に受領を拒絶されて返送されて来たので、そのころ直ちに弁済供託をなした旨主張し、≪証拠省略≫によれば右事実を認めることができる。

右事実によれば、控訴人が当審において追加請求している昭和四四年分の賃料債権は弁済供託によって消滅したものと認めることができる。なお、原審判決における被控訴人ら敗訴部分の昭和四一年度の一部および昭和四二、四三年度分の賃料については、被控訴人らから控訴又は附帯控訴もないから判断しない。さらに付言すれば、右弁済の提供および弁済供託は、控訴人が被控訴人に対し昭和四五年二月九日に本件土地賃貸借契約を解除した後になされたものであるから、右事実は控訴人のなした解除の効力に何ら消長を来たすべきものではない。

五、本件土地上に、被控訴人ら全員が別紙目録(一)記載の建物を共有し、被控訴人大西運敏が単独で同目録(二)記載の建物を所有して、それぞれ本件土地を占有していることは、当事者間に争いがない。

六、すでに認定した事実によって明らかなとおり、被控訴人らの負担する昭和四三年度までの賃料残額は、別紙計算書(二)のとおり、合計四、〇〇七円であり、これを被控訴人らの相続分の割合に従って各人の負担すべき金額を算出すると、被控訴人大西ヤスノは一、三三五円、その余の被控訴人らは各三三四円となる。

七、以上の次第で、本件土地明渡請求は理由があり、これを棄却した原判決は相当でないので、これを取消して主文第2項のとおり自判し、昭和四三年分までの賃料等請求は右の限度で理由があり、これを超える部分は理由がないから、この部分についての原判決は相当であり本件控訴は理由がないからこれを棄却し、当審における追加請求も理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 秋山正雄 裁判官 梶本俊明 梶村太市)

<以下省略>

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